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東京地方裁判所 昭和60年(ワ)4808号 判決 1986年7月29日

原告(反訴被告)

野田幹夫

原告(反訴被告)

中嶋好二

原告(反訴被告)

基太村聰

原告(反訴被告)

小林久夫

右四名訴訟代理人弁護士

西本恭彦

加茂善仁

石信憲

原告(反訴被告)

石丸健雄

右訴訟代理人弁護士

柳原武男

被告(反訴原告)

荒川昭

主文

一  被告(反訴原告)は、原告(反訴被告)野田幹夫、同中嶋好二、同基太村聰、同小林久夫に対し、別紙物件目録(一)記載の土地内にある鉄杭・チェーン等の工作物を撤去せよ。

二  被告(反訴原告)は、別紙物件目録(一)記載の土地について、原告(反訴被告)石丸健雄の通行を妨害してはならない。

三  原告(反訴被告)らのその余の請求を棄却する。

四  被告(反訴原告)の反訴請求をいずれも棄却する。

五  訴訟費用は、本訴反訴を通じこれを三分し、その二を被告(反訴原告)の負担とし、その余を原告(反訴被告)らの負担とする。

事実

原告(反訴被告)野田幹夫を「原告野田」、原告(反訴被告)中嶋好二を「原告中嶋」、原告(反訴被告)基太村聰を「原告基太村」、原告(反訴被告)小林久夫を「原告小林」といい、以上原告四名を一括して指すときは、「原告野田ら」といい、原告(反訴被告)石丸健雄を「原告石丸」といい、以上原告五名を一括して指すときは、「原告ら」といい、被告(反訴原告)荒川昭を「被告」といい、別紙物件目録(一)ないし(七)記載の土地を「本件(一)ないし(七)の土地」という。

第一  当事者の求めた裁判

(本訴)

一  請求の趣旨

1 主文第一、第二項と同旨

2 原告らと被告との間において、それぞれ本件(二)ないし(六)の土地を要役地、本件(一)の土地を承役地として通行を目的とし、期間の定めない無償の地役権を有することを確認する。

3 訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1 原告らの請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は原告らの負担とする。

(反訴)

一  請求の趣旨

1 被告に対し、原告野田は、金四〇〇万円、同基太村は金三五〇万円、同中嶋は、金四〇〇万円、同小林は、金二二〇万円、同石丸は、金二五〇万円及びこれらに対する昭和六〇年五月二日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2 原告野田らの専用住宅は建築基準法違反につき使用禁止であることを確認する。

3 反訴費用は原告らの負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1 主文第四項と同旨

2 反訴費用は被告の負担とする。

第二  当事者の主張

(本訴)

一  請求原因

1 原告野田は、本件(五)の土地を、原告中嶋は、本件(三)の土地を、原告基太村は、本件(六)の土地を、原告小林は、本件(四)の土地を、原告石丸は、本件(二)の土地を、被告は本件(一)及び(七)の土地を各所有し、その位置関係は、別紙図面(一)表示のとおりである。

2(一) 本件(一)ないし(七)の土地は、他の土地とともに、もと東京都狛江市和泉一二三一番の一として一筆の土地であり、訴外伊藤豊成(以下「伊藤」という。)が所有していたが、伊藤が、昭和四四年七月三日右一筆の土地を、同番の一、八(本件(七)の土地)、九(本件(二)の土地)、一〇、一一、一二(本件(一)の土地)、一三ないし一七に分筆(以下「第一期分筆」という。)した。

(二) 伊藤は、右分筆の際、同番の一二(本件(一)の土地)一三ないし一七の六筆(以下「本件六筆の土地」という。)を、一括してこれに接する土地の分筆後の譲受人らの通行及び自動車の出入りに使用するため、幅員四メートルの私道敷として区画し、アスファルト舗装をし、両側に大谷石二段の石垣を施し、側溝を設けた。

(三) その後、伊藤は、右分筆後の同番の一の土地を、同番の一三、一四の土地とともに昭和四五年三月三日訴外株式会社梅月(以下「梅月」という。)に売却し、梅月が、同年一一月二〇日同番の一を、同番の一、一八、一九(本件(三)の土地)、二〇、二一(本件(四)の土地)、二二(本件(五)の土地)、二三(本件(六)の土地)に分筆(以下「第二期分筆」という。)し、同番の一を私道敷として区画し、本件六筆の土地に接続する形で幅員四メートルの私道として舗装し、側溝を設け、本件六筆の土地と合わせて公道から幅員四メートルの型の私道とした。

(四) 伊藤は、梅月に、右売却するに際し、本件(一)の土地及び同番の一七の土地を梅月が分譲する土地の譲受人らの通行及び自動車の出入りに使用することを承諾した。

3 原告石丸は、伊藤から、昭和四四年九月一八日本件(二)の土地を買い受け、原告中嶋は、梅月から、昭和四六年一月一九日本件(三)の土地を、同年二月一〇日本件(五)の土地を買い受け、原告中嶋は、原告野田に対し、同年四月一八日本件(五)の土地を売却し、原告基太村は、梅月から買い受けた峯尾富義から、昭和四七年七月一三日ころ本件(六)の土地を買い受け、原告小林は、梅月から買い受けた田中美徳から、同月二一日本件(四)の土地を買い受け、その際、それぞれ本件(一)の土地を通行する権利を取得し、伊藤はこれを承諾した。

4(一) 被告は、伊藤から、昭和五二年六月五日ころ本件(七)の土地を、本件(一)の土地及び一二三一番の一七の土地とともに買い受けた。

(二) 被告は、右買受けに際し、伊藤から、本件(一)の土地を、前記2(二)及び(四)のとおり各譲受人の通行の用に供することを認めた地位を承認し、承継した。

5(一) 右2ないし4は、伊藤と原告ら間に、原告らがそれぞれ、本件(二)ないし(六)の土地を買い受けた際、又はそのころ、それぞれを要役地とし、本件(一)の土地を承役地とする通行を目的とする期間の定めのない無償の地役権を設定し、被告がこれを承継したものである。

(二) 通行地役権でないとしても、本件(一)の土地についての通行のための、期間の定めのない使用借権の設定及びその承継とみるべきであるから、原告らは、本件(一)の土地を通行する使用借権を有している。

6 原告石丸の予備的主張

(一) 原告石丸と被告との間で、被告が本件(七)と(一)の土地を買い受けた昭和五二年六月五日ころ、本件(二)の土地を要役地、本件(一)の土地を承役地とする通行のための期間の定めのない無償の地役権の設定契約を締結した。

(二) 原告石丸は、被告の承諾を得て、昭和五三年九月上旬原告が本件(二)の土地の西側間口の南側から五・四メートルの部分にシャッターを、これに引き続いて八〇センチメートルの出入口(扉付)を各設置する工事(別紙図面(二)のとおり)に着工し、同年一二月二〇日右工事が竣工し、以来現在まで、原告石丸は、右シャッター部分から自動車を出入りさせ、人は、右出入口から出入りして、本件(一)の土地を使用している。

したがつて、原告石丸と被告間に、昭和五三年一二月二〇日ころまでには、本件(一)の土地について通行のための期間の定めのない使用貸借契約が締結されたものである。

7(一) 被告は、昭和五三年二月に、本件(七)の土地に入居した後、右土地の出入口先の本件(一)の土地が自己所有地であるとして、右土地と一二三一番の一三の土地との境界線上に四本の鉄杭を立て、それらをチェーンで張るなどの妨害物を設置し、原告らが本件(一)の土地を通行し、自動車の出入りに使用するのを妨害している。

(二) 被告は、原告石丸に対し、昭和五四年六月二七日に同年一二月末以降の本件(一)の土地の使用禁止(原告石丸、被告間の本件(一)の土地に関する無償の通行地役権又は使用貸借の解除)を通告したほか、その後口頭でたびたび杭を打つて通行できなくすると実力行使を予告している。

8 被告の右7の行為は、原告らの有する前記権利を侵害するとともに、被告の本件(一)の土地の所有権についての権利の濫用というべきである。

すなわち、

(一) 本件(一)の土地は、一二三一番の一、一三ないし一七の土地と一体となつた公衆用道路であり、側溝が設けられ

て舗装され、本件(一)の土地内にはマンホールが設置され、下水管、ガス管も埋設され、狛江市から地方税法三四八条二項五号の「公共の用に供する道路」に該当するものと認定され、土地の課税台帳において、現況地目「公衆用道路」として非課税物件とされて来た。

被告も、右の非課税措置がとられていることを知つてこれを放置している。

(二) 原告らは、本件(二)ないし(六)の各土地上にそれぞれ建物を建築して以来、被告が右7の行為をするまで、本件(一)の土地を通路として使用して来た。

(三) 被告には、本件(一)の土地を通路として使用する以外には、格別の利用方法はなく、原告らの通行を禁止したり、妨害したりしても何らの利益も有していない。

(四) 原告らが、本件(一)の土地の通行を禁止されたり、妨害されたりすることは、原告ら所有地の利用価値を半減することになる。

右のような事実関係のもとでは、被告の右7の行為は権利の濫用である。

よつて、原告らは、被告との間において、それぞれその所有の本件(二)ないし(六)の土地を要役地、本件(一)の土地を承役地として通行を目的とし、期間の定めのない無償の地役権を有することの確認を求め、原告野田らは、被告に対し、地役権、使用借権ないしは権利濫用の法理に基づき、本件(一)の土地内にある鉄杭・チェーン等の工作物の撤去を求め、原告石丸は、被告に対し、地役権、使用借権ないしは権利濫用の法理に基づき、本件(一)の土地について原告石丸の通行妨害の禁止を求める。

二  請求原因に対する認否

1 請求原因1の事実は認める。

2 同2(一)の事実は認める。同2(二)のうち一二三一番の一四ないし一七の四筆を私道敷とするため区画したことは認めるが、その余の事実は否認する。同2(三)の分筆の事実は不知、その余の事実は否認する。梅月ら土地分譲者が、本件(一)の土地を勝手に私道に使えると称して分筆したものである。同2(四)の事実は否認する。

3 同3のうち、その主張の売買のあつたことは不知、その余の事実は否認する。

4 同4(一)の事実は認める。同4(二)の事実は否認する。

5 同5(一)及び(二)の事実は否認する。

6 同6(一)及び(二)の事実は否認する。

7 同7(一)のうち本件(一)の土地と一二三一番の一三の土地との境界線上に四本の鉄杭を立て、それらをチェーンで張つたことは認めるが、その余の事実は否認する。本件(一)の土地の境界の表示として設置したものである。同7(二)のうちその主張の使用禁止の通告をしたことは認めるが、その余の事実は否認する。

8 同8のうち、本件(一)の土地内にマンホールが設置され、下水管、ガス管が埋設され、非課税物件とされていることは認めるが、その余の事実は否認する。右マンホールの設置等は、狛江市が勝手にしたものである。

なお、原告野田らは、違法造成地に違法建築して入居している者であるから、法的保護に値しない。

(被告の右主張に対する原告野田らの認否)

否認する。

三 抗弁

被告が本件(一)の土地に鉄杭を立てたのは、被告所有の本件(一)の土地の範囲を明らかにするため、原告野田らの同意を得たうえでしたものである。

四 抗弁に対する認否

否認する。

(反訴)

一  請求原因

1 原告らの提起し追行している本訴は、誤つた主張に基づく不法、不当な訴訟であり、このため、被告は、肉体的、精神的、経済的負担を蒙り、拘束を受け、その村八分的白眼視には目に余るものがあり、被告の忍耐も極限状態にある。

2 原告野田らは、昭和五三年一月二二日午前八時半ごろ本件(一)の土地上に置いた被告の車を「ドケロ」と罵り、原告基太村は、同日夜右車のボディーに長さ四メートルほど鍵で傷を付け、原告野田らの誰かが同月三一日夜右車のワイパーをねじ曲げ、同年四月ころ車体上に、被告の建設業及び建築士事務所登録の看板をわざわざはずして置き、直径五センチメートルほどの痰と唾を数か所に吐き、同年七月ころ原告基太村の実母が被告の目前で車や燈を損傷するなど、暴力、妨害、脅迫行為をし、また、市会議員その他の人を被告方にさし向けるなどの告げ口をして被告の社会的信用を傷つけた。

3 原告らの本訴の提起追行、暴力等の行為は、建築基準法、宅地建物取引業法、民法九〇条、九五条、二一三条、二八〇条、五六六条、七〇九条に違反している。

4 原告らの右行為による被告の損害額の算定は、原告野田の代理人弁護士西本恭彦が昭和五三年一〇月五日付被告宛の内容証明郵便によつて、同年四月から毎月五万円ずつの支払をするよう脅迫し強要したので、これを逆手にとり、その三倍を月額とし、昭和六二年三月までの一〇八か月分の合計一六二〇万円を損害額とし、これを各原告らに次のとおり分割する。

(一) 原告小林は、第一回調停時より会えば挨拶するので平均より減じ、二二〇万円とする。

(二) 原告石丸は、要素の錯誤があり、その訴訟の構成と戦略、戦術は愚劣で謝罪なく、金さえ払えばよいだろうとの安易な考え方で、裁判を長期化させたので平均より多少減じ、二五〇万円とする。

(三) 原告基太村は、近隣で卑劣な最初に手出しをした仕掛人であるから、平均より増額し、三五〇万円とする。

(四) 原告野田、同中嶋は、無法地帯を正当化しようとして抽象的な訴状で訴訟を提起した帳本人であるので増額し、各四〇〇万円とする。

5 原告野田らの住宅の敷地は、道路に二メートル以上接しておらず、その住宅を建築するに当たつては、建築確認申請書は提出されておらず、無届けで検査済証もない。原告らは、このように建築基準法違反の住宅に居住している。

よつて、被告は、不法行為に基づく損害賠償請求として、原告野田に対し、四〇〇万円、同基太村に対し三五〇万円、同中嶋に対し四〇〇万円、同小林に対し二二〇万円、同石丸に対し二五〇万円及びこれらに対する不法行為の日の後である昭和六〇年五月二日から各支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、かつ、原告野田らの専用住宅は、建築基準法違反につき使用禁止であることの確認を求める。

二  請求原因に対する認否

すべて否認する。

第三  証拠<省略>

理由

(本訴についての判断)

一請求原因1(原告らと被告の各土地の所有権及び位置関係)の事実は、当事者間に争いがない。

二請求原因2(分筆の経過と私道敷の区画等)について

1  請求原因2(一)(第一期分筆)の事実は、当事者間に争いがない。

2  請求原因2(二)(第一期分筆の私道敷の区画等)のうち、一二三一番の一四ないし一七の四筆を私道敷として区画したことは当事者間に争いがない。

そこで、本件(一)の土地を分筆した目的等について検討する。

<証拠>を総合すると、伊藤は、昭和三五年五月四日訴外小泉義温から、第一期分筆前一筆の土地であつた一二三一番の一を、病院と自宅を建築する目的で買い受け、同月六日その旨の所有権移転登記を経由したが、昭和四四年ころ、三軒茶屋に建物を建築した費用に充てるため、その一部を売却しようと考え、訴外門井不動産株式会社(以下「門井不動産」という。)の門井二郎(以下「門井」という。)に分筆及び売却方を依頼したこと、門井は、土地家屋調査士の黒済与志一(以下「黒済」という。)に分筆手続を依頼したこと、黒済は、同年七月一日分筆のための地積測量図を作成し、同月三日第一期分筆の手続を了したこと、この分筆に当たつての門井らの基本的な考え方は、袋地を生じないよう、どの部分の譲受人も、利用できるような公路に通ずる四メートルの幅員の通路を設け、この通路を分割して各譲受人が所有できるように、本件(一)の土地、同番の一三ないし一七の六筆(本件六筆の土地)に分けたこと、伊藤は、当時この分筆の際、残した同番の一には病院を建て、本件(七)の土地には居宅を建て妹を住まわせようと考えたが、門井から本件(七)の土地は、右通路に二メートル幅しか接道しないこととなるため、この土地を有効に利用するには、建築確認申請に当たつて、本件(一)の土地をいわゆる敷地延長として申請する必要があり、したがつて、本件(七)の土地と本件(一)の土地とは一体として所有すべき関係にあるとの説明を受けていたこと、同番の一四ないし一七は、明確に私道として確保できるよう、むしろ敷地と接しない部分を互いに所有するようにしたいと考えたこと、そのころまでに、門井の依頼により井筒屋工務店が、右地積測量図に符合するように宅地、私道造成工事を行つたこと、この私道の造成工事の内容は、本件六筆の土地を一括して幅員四メートル、奥行二二メートル余の公路に通ずる通路とし、アスファルト舗装し、この通路に接する両側の宅地と奥の宅地との境界には、二段積みの大谷石をめぐらせ、その通路側に側溝を設け、この側溝に流れ込む水は、本件(一)、(六)、(七)の各土地の接する点付近に集められ、そこから本件(六)及び(七)の土地の境界線付近を北東に流れて野川に注ぐように土管が埋設され、外観上は、右通路は、本件六筆の土地が一体として通行に利用できるように造成されたことが認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。

3  請求原因2(三)(第二期分筆とその私道敷の区画等)について検討するに、<証拠>を総合すると、伊藤は、本件(一)、(七)の土地及び一二三一番の一七の三筆を残して、第一期分筆後の一二三一番の一、一三、一四の三筆を訴外伊豆高原開発株式会社(以下「伊豆高原」という。)の仲介で、梅月に昭和四五年三月三日売却した(但し、当初買主名義は梅月の都合で、その代表者である市野盛治(以下「市野」という。)の息子である市野進とされていたが、その後梅月に訂正された。)こと、この売買に際し、伊藤は、現地に行くことなく、一切を伊豆高原に委せていたこと、その売買契約締結の際、梅月は、一度に代金を支払うことができなかつたので、梅月は、伊藤との間で買受地を第三者に分割譲渡することができ、その場合には、分割予定図を伊藤に提出し、代金完済までは建物を建てないことを約したこと、市野は、伊豆高原から、本件六筆の土地は私道であつて誰でも通行することができ、将来は、北東側の野川の河川敷が舗装されて公道になる予定である旨の話を聞いていたので、これらを前提として、分譲する目的で土地家屋調査士の津村克巳(以下「津村」という。)に分筆手続を依頼したこと、津村は、昭和四五年八月一九日の測量により、同年九月二四日ころ実測図を作成し、同年一一月二〇日一二三一番の一を、別紙図面(一)のとおり、同番の一、一八、一九(本件(三)の土地)、二〇、二一(本件(四)の土地)、二二(本件(五)の土地)、二三(本件(六)の土地)に分筆(第二期分筆)し、同番の一を私道敷として区画し、本件六筆の土地の通路に接続する形で四メートル幅の型となる通路を設ける分割図を作成し、市野は、この図面を伊豆高原の川副専務に対し、伊藤に手渡すよう依頼して提出したこと、そして、その頃右第二期分筆に添つた造成工事、すなわち、宅地、私道の造成工事をし、同番の一と一三との間の大谷石の土留、側溝を取り毀わし、同番の一を一三に接続する通路として舗装し、その両側と奥の北西側に側溝を設け、同番の一を本件六筆の土地の通路に型に接続する公路から四メートルの幅員の通路に造成したこと、市野は、この通路によつて第二期分筆後の譲受人らが通行し、自動車で出入りができるものと考えていたこと、昭和四五年八月ころには、狛江市は、本件(一)の土地の下に下水管を敷設し、本件(一)の土地の北東三分の一位の位置にマンホールを設置し、そのころガス、水道管も本件(一)の土地と一二三一の一三の土地の下に埋設されたこと、右下水道については、伊藤は、昭和五一年七月一〇日ころ市当局に所有者に無断でした工事であるから善処されたい旨の申入れをしていることが認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。

4 請求原因2(四)(伊藤、梅月間の売買の際の特約)について検討するに、<証拠>によれば、伊藤が梅月に、第一期分筆後の一二三一番の一、一三、一四の土地を売却するに際し、同番の一五ないし一七の土地を梅月らが分譲する土地の譲受人らの通行及び自動車の出入りに使用することを承認していたことは認められるが、すすんで、本件(一)の土地について、かかる承認をしたことは、全立証によつてもこれを認めることはできない。すなわち、<証拠>を総合すると、梅月から依頼された土地家屋調査士の渡部勝方は、昭和四五年九月土地所有権者伊藤、臼井克郎(第一期分筆後の一二三一番の一一の買受人)、原告石丸(この買受の経緯は後記三1のとおり)名義の道路位置指定申請図を作成したこと、この申請図は当初前記2で認定した本件六筆の土地全部の、幅員四メートル、延長二二・八〇メートルを道路とする旨の申請図であつたが、伊藤は、本件(一)の土地について道路位置指定を申請するつもりはないから、訂正して欲しい旨申入れ、そのため、一二三一番の一四ないし一七の四筆の幅員四メートル、延長一四・九三メートル(メートルを基準とすれば、正確には、本件(一)の土地及び一二三一番の一三の土地の南側部分が若干含まれる。)を道路とする旨の申請図に訂正して申請され、昭和四五年一一月二日その申請どおりに指定され、同年一二月一七日その旨の告示がされたこと、伊藤が、昭和四八年五月二七日ころ現地に行つてみると、一二三一番の一三と一との間の大谷石の土留が壊わされ、同番の一が本件六筆の土地の通路と一体となつて公路に接続する道路となつて使用されているので、原告野田らに集まつてもらつて、本件(一)の土地は、本件(七)の土地の敷地延長であつて法律上道路となつているわけではない旨の説明をしたことが認められ、この認定事実によれば、伊藤が本件(一)の土地を通行に使用することをあらかじめ積極的に承認していたとまでは認めることはできない。

三請求原因3(原告らの所有権取得等)について

1<証拠>を総合すると、伊藤は、原告石丸に対し、昭和四四年九日一八日門井不動産、訴外藤田不動産株式会社(以下「藤田不動産」という。)を仲介人として、本件(二)の土地を代金六〇〇万円で売り渡したこと、伊藤は、右売買に際し、門井不動産に一任し、現地の指示は、門井不動産及び藤田不動産が行つたこと、藤田不動産は、原告石丸に対し、本件(二)の土地が幅員四メートルの舗装道路に接している旨の図面(甲イ第九号証の二)を示して私道負担はないと説明していること、それとともに、両社は、本件(一)の土地は、建ぺい率、容積率の関係で本件(七)の土地の敷地延長となつているので、通行に使うことはさしつかえないが、道路上に物を置いてはいけない旨の説明をしたこと、それに対し、原告石丸は、第三者が生じた場合を懸念したので、伊藤は、昭和四四年七月一九日付念書をもつて、本件(一)の土地のうち公路側の三角形の部分は自由に通行することはさしつかえなく、自分が分譲する場合にもこのことを条件とする旨を記載して、この書面を原告に交付したこと、当時の本件(一)の土地付近は、本件六筆の土地を一体とした幅員四メートルの通路としての形態をなし、両側に側溝も入つていたこと、原告石丸は、昭和四九年六月一八日本件(二)の土地上に居宅の建築に着工し、同年一二月一一日完成し、本件(一)の土地の公路側の一部を自動車の出入りに使用するような位置、すなわち、別紙図面(二)の車庫の位置付近に車庫を設けたこと、この当時には、すでに第二期分筆後の後記2認定のような分譲を受けた者が、四軒の居宅に居住し、本件(一)の土地を含む「型の通路を通行や自動車の出入りに使用していたこと、右の建築中にこの付近を訪れた伊藤は、原告石丸に対し、本件(七)の土地も買わないかと申入れたが、同原告は断わつたこと、昭和五一年ころ、伊藤は、再びこの付近を訪ね、現地を見て、奥の二軒が車を持つて本件(一)の土地も通行している様子を見たが、その際、格別異議を述べることはしなかつたこと、原告石丸は、昭和五三年一一月ころから一二月にかけて車庫のシャッターの改造工事をしたが、そのとき、事前に被告にそのことの了解を求めたところ、被告は、扉は、本件(一)の土地の通行を妨げないよう内開きにして欲しいとの条件で了解したので、同原告は、訴外株式会社川田工務店に依頼して別紙図面(二)のとおり上下式のシャッターを取り付けたことが認められ、この認定に反する証拠はない。

2<証拠>を総合すると、原告中嶋は、梅月から昭和四六年一月一九日本件(三)の土地を買い受け、同月二〇日中間省略で伊藤から所有権移転登記を了し、昭和四六年二月一〇日梅月から本件(五)の土地を買い受け、同月一二日中間省略で伊藤からの所有権移転登記を了し、同年五月一四日ころ本件(五)の土地を原告野田及び訴外池田金七に売却し、同月一七日その旨の所有権移転登記を了したこと、原告基太村は、梅月から買い受けた訴外峯尾富義から、昭和四七年七月一三日ころ本件(六)の土地を買い受け、同日その旨の所有権移転登記を了したこと、原告小林は、訴外小林裕子とともに、梅月から買い受けた田中美徳から同月一九日本件(四)の土地を買い受け、同月二〇日中間省略で梅月からの所有権移転登記を了したこと、右原告らは、いずれも市野又は田中美徳から、本件六筆の土地及び一二三一番の一を通路として使用して公路に至る四メートルの幅員の通路を通行又は自動車の出入りに使用できるとの説明を受けて買い受けたものであること、その当時前記二3に認定したような通路が造成されていたこと、原告野田、同中嶋、同基太村、同小林の順で昭和四六年から昭和四七年にかけて入居し、その後は本件(一)の土地を含む本件六筆の土地を通路として通行し、原告野田、同基太村は、自動車を所有して右土地を出入りに利用していたこと、原告野田は、伊藤から昭和四八年ころ本件(一)の土地は、敷地延長の土地であること、そのため私道持分の割合が多いから原告野田らに公平になるよう持分を買つてくれないかとの申入れを受けたことがあり、原告野田は、原告中嶋から買い受けていたので、同原告を通じて話があれば応じてよい旨答えたことがあることが認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。

四請求原因4(被告の所有権取得等)について

1  請求原因4(一)(被告の本件(七)、(一)及び一二三一番の一七の土地買受)の事実は、当事者間に争いがない。

2<証拠>を総合すると、伊藤は、本件(七)、(一)の土地及び一二三一番の一七の土地を最後まで残していたが、島田市の病院を改築するための資金とするために、これを門井不動産及び訴外三協株式会社の仲介で被告に売り渡したこと、門井は、契約当日、地積測量図写(乙第二三号証)を示して、本件(一)の土地は、本件(七)の土地の建ぺい率、容積率を高めるためのいわゆる敷地延長の宅地であること、本件(一)の土地内に敷設されている狛江市の下水道は、市が伊藤に無断で工事を行つたものであつて、昭和五一年七月一〇日善処方の申し入れをしていること、原告石丸には本件(一)の土地の通行を承認していることを説明し、被告はこれを了解して右1の売買契約が締結されたこと、被告は、昭和五二年九月二九日建築確認申請をし、同年一〇月二九日確認があり、その後すぐ建築にとりかかり、昭和五三年一月二三日完成と同時にこれに入居したこと、この建築中に、被告は、原告らが本件(一)の土地を含む本件六筆の土地を通行し、原告野田、同基太村、同石丸が自動車の出入りに利用していることを現認したが黙認していたこと、被告も、第二期分筆後の一二三一番の一や一三の土地に自動車を出入りさせたり、駐車させていたこと、被告は、本件(一)の土地がいわゆる敷地延長として使用するに妨げとならない限り、本件(一)の土地を原告らが通行に使用することは隣近所である以上やむをえないこととして認めていたこと、そして、伊藤所有当時からそのような状況であつたことを知つていたこと、ところが、昭和五三年一月二二日夜八時半ころ、被告が本件(一)の土地上に自動車を置いていたため、帰宅した原告基太村が自動車を、自宅に入れることができず、クラクションを鳴らしたが、被告が出て来るのが遅くなつたため、原告基太村は、被告に対し本件(一)の土地に自動車を置かないで欲しいといい、被告は、本件(一)の土地は、本来私道ではないといい、口論となり、その後は、原告野田らと被告間に本件(一)の土地の通行に関し、意見を異にするに至つたことが認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。

五請求原因5(通行地役権又は使用借権の存在)について

1  原告らは、本件(一)の土地について通行地役権を有する旨主張するが、全立証によつても、伊藤が原告らとかかる通行地役権の設定契約をしたものと認めるに足りる証拠はなく、かつ、前記二ないし四で認定した事実を合わせ考えると、伊藤は、本件(一)の土地は、本件(七)の土地のいわゆる敷地延長として利用する必要があると考え、本件(一)の土地につき道路位置指定を受けることを拒み、本件(一)の土地の地下に下水道を埋設し、マンホールを設置したことに対し狛江市に善処方を申入れたりしているから、黙示的にも、物権的な通行地役権を設定したものとみることはできないから、原告らのこの点の主張は採用することができない。

なお、原告石丸は、予備的に、原告石丸と被告間に通行地役権設定契約があつた旨主張するが、全立証によつても、かかる契約があつたことを認めるに足りる証拠はない。

2  しかし、原告らは、二次的に、本件(一)の土地について通行のための使用借権を有すると主張するので、この点について検討するに前記二ないし四で認定した事実を合わせ考えると、伊藤は、第一期分筆の際、本件(一)の土地を含む本件六筆の土地を一体として、この分筆分譲によつて生ずる譲受人らの通行に供するため一本の通路としての造成を行い、事実上通行することには異議がなかつたが、第二期分筆によつてその分譲を受けた原告野田らが、本件(一)の土地を当然私道であるかのように使用することによつて、本件(七)の土地上に建物を建築する際に、本件(一)の土地を本件(七)の土地のいわゆる敷地延長として取り扱わなくなることをおそれ、原告野田らにその点の注意を喚起したが、本件(一)の土地を事実上通行又は自動車の出入りに使用することは、黙認する態度であつたのであり、被告も、本件(一)の土地を買い受けた昭和五三年一月二二日までは、伊藤と同様の考えで、同様な態度をとつていたものとみることができる。

そして、これは、伊藤が原告らに対し、遅くとも、昭和五一年ころまでには、本件(一)の土地について通行又は自動車の出入りのための期間の定めのない使用借権を設定したものと評価するのが相当であり、被告もまたこれを承認して承継したものと評価するのが相当である。

六請求原因7(被告の妨害物の設置等)について

1  請求原因7(一)(鉄杭等の設置)のうち、被告が本件(一)の土地と一二三一番の一三の土地との境界線上に四本の鉄杭を立て、それらをチェーンで張つたことは当事者間に争いがなく、原告野田幹夫本人尋問の結果によれば、原告らは、右鉄杭やチェーンがあるため、本件(一)の土地を、通行や、自動車の出入りに使用することを妨げられていることが認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。

なお、近時の生活においては、通行のため自動車を使用する必要性を無視することはできず、日常生活上広く必需品になつているということができるから、原告らにとつて幅員四メートルの一定した通路を確保する必要があり、幅員二メートルの一二三一番の一三のみでは、通路としての利用が妨げられているとみるべきである。

2  請求原因7(二)(原告石丸に対する使用禁止通告等)のうち、被告がその主張の使用禁止の通告をしていることは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、被告が原告石丸に対し、本件(一)の土地の通行ができないようにする旨の実力行使を予告していることが認められる。

右事実によれば、原告石丸は、本件(一)の土地を通行することを被告によつて妨害されるおそれがあるものといわなければならない。

七被告は、抗弁として、鉄杭を立てたのは、被告所有の本件(一)の土地の範囲を明確にするためで、原告野田らの同意を得てしたものであると主張し、被告本人尋問の結果中にもこれに添う部分があるが、弁論の全趣旨によれば、右が単に本件(一)の土地の範囲を明らかにするためであるとは到底考えられないし、被告本人尋問の結果中の原告野田らの同意というのも、論争の過程で、「できるものならやつてみろ」という趣旨で述べたというに過ぎないから、これをもつて同意があつたとは到底いえないから、被告のこの点の抗弁は理由がない。

八以上の理由によれば、右六で認定した被告の行為は、右五2で認定した原告らの本件(一)の土地についての使用借権を侵害しているものということができ、原告野田らの妨害物である鉄杭、チェーン等の工作物の除去を求める請求及び原告石丸の通行妨害の禁止を求める請求は理由がある。

もつとも、被告の右行為が使用貸借の目的物の返還を求める趣旨と解されないではないが、右使用貸借の目的は、通行であるから、その終了に至るまでは返還を求めることはできないし、しかも、その返還請求は、次のとおり権利の濫用に当たるといわなければならない。

すなわち、本件(一)の土地が非課税物件とされていることは当事者間に争いがなく、かつ、<証拠>を総合すると、昭和五一年度以降は、本件(一)の土地は、土地課税台帳上、現況地目を公衆用道路と表示して非課税扱いされていたこと、これは、狛江市が、本件(一)の土地が不特定多数の者の通行に利用され、地方税法三四八条二項五号の「公共の用に供する道路」に当たると評価したからであること、昭和五九年三月二二日発行の土地課税台帳登録証明書では、現況地目を「公衆用道路」としたうえ、「上記現況地目は、課税台帳上では公衆用道路で表示しているが現況は袋路地です。」との注書をし、昭和六〇年五月一六日発行の同証明書では、現況地目を「袋路地」と記載しているが、その後も非課税扱いがされており、右のように袋路地としたのは、公路から公路に抜けている私道は、公衆用道路、ゆきどまりの通り道は袋路地と分類することに方針を変更したためであり、非課税扱いについては両者に差異のないことが認められ、この認定に反する証拠はない。

なお、昭和五一年度以降本件(一)の土地が右の理由で非課税扱いとなつたのが、申請によつたものか、職権によつたものかは、全立証によつても明らかではないが、非課税扱いとなつていることを被告が知つた後も、被告は、これを知つて放置していることは弁論の全趣旨によつて認められる。

そうすると、被告は、本件(一)の土地が不特定多数の者の通行の用に供されているため非課税物件とされていることを知悉しているのであり、その土地の形状、周辺の土地との位置関係からみて、原告らの通行の用に供されていても、いわゆる敷地延長(路地状敷地)としての扱いが是認される以上、被告に格別の不利益を与えるものとは考えられず、一方、その利用を阻止される原告らの不利益は極めて大きいことなどを勘案すると、被告の返還請求は、本件(一)の土地についての所有権の行使の濫用と評価することもできる。

被告は、原告野田らは、違法造成地に違法建築して入居している者であるから、法的保護に値しないと主張するが、建築基準法に違反しているかどうかは公法関係の問題であり、かつ、前記二ないし四で認定した事実関係のもとでは、原告らの通行が法的保護に値しないとはいえない。

九したがつて、原告らの本訴請求のうち通行地役権の確認を求める請求は理由がないが、原告野田らの妨害排除を求める請求及び原告石丸の妨害の禁止を求める請求は理由がある。

(反訴についての判断)

一請求原因1(本訴が不法不当訴訟であること)について

原告らの本訴請求のうち、通行地役権の確認を求める請求が理由のないことは、本訴についての判断において、説示したとおりであるが、妨害排除及び妨害禁止を求める請求は理由があり、しかも本訴についての判断二ないし四に認定した事実関係のもとでは、原告らが本件(一)の土地につき通行地役権があると考えて本訴を提起することも無理なこととはいえないというべきであるから、原告らの本訴の提起及び追行が、不法行為に当たるとは到底いえない。そして、全立証によつても原告らが、本訴の提起及び追行に関連して、他に格別不法行為に当たるような言動をとつたものとも認められないので、反訴請求原因1は理由がない。

二請求原因2(原告野田らの暴行、脅迫等)について

原告基太村が、昭和五三年一月二二日夜八時半ころ被告が本件(一)の土地上に自動車を置いていたため自宅に車を入れることができず、クラクションを鳴らしたり、被告に本件(一)の土地に自動車を置かないで欲しいといつたこと、そのことから口論となつたことは、本訴についての判断四2において認定したとおりであるが、右が直ちに不法行為と評価できるほどの行為とはいえず、原告基太村が車のボディーに鍵で傷を付けたとの主張については、被告本人尋問の結果中には、これに添うかの如き供述部分があるが、曖昧であり、原告野田本人尋問の結果及び弁論の全趣旨に照らし、これを直ちに採用することはできず、その他車に対する不法行為の主張については、これを認めるに足りる証拠はなく、被告に前記六で認定した行為のあつたことと対比すると、原告らに不法行為と評価するに足りる行為があつたとはいえない。その他、被告は、原告らに不法行為があつたとして種々主張するが、その主張自体において原告らの不法行為と評価できるか疑問の行為もあり、また、全立証によつても、原告らに損害賠償を命ずるほどの不法行為があつたことを肯認するに足りる証拠はない。

三被告は、更に反訴請求として、原告野田らの住宅は、建築基準法違反であるとの理由で、その使用禁止を求めるというが、同法に基づく法律関係は公法関係であるから、私人である被告が、原告野田らの住宅の建築について、建築基準法違反があるからといつて、直ちにその使用禁止を求める権利を有するとはいえないから、この点の反訴請求も理由がない。

(結論)

以上判示したとおり、原告らの本訴請求のうち、原告野田らが、使用借権に基づいて本件(一)の土地内の工作物の撤去を求める請求、原告石丸が、使用借権に基づいて本件(一)の土地内の通行の妨害禁止を求める請求は、いずれも理由があるので、これを認容し、原告らのその余の請求及び被告の反訴請求は、いずれも理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担につき、民訴法八九条、九二条本文、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官小倉 顕)

別紙物件目録

(一) 東京都狛江市和泉本町二丁目一二三一番一二

宅地 一七・六四平方メートル

(被告所有)

(二) 同所同番九

宅地 一五〇・四三平方メートル

(原告石丸健雄所有)

(三) 同所同番一九

宅地 一一一・五六平方メートル

(原告中嶋好二所有)

(四) 同所同番二一

宅地 九四・三三平方メートル

(原告小林久夫所有)

(五) 同所同番二二

宅地 七八・六九平方メートル

(原告野田幹夫所有)

(六) 同所同番二三

宅地 八二・九九平方メートル

(原告基太村聰所有)

(七) 同所同番八

宅地 一四一・四九平方メートル

(被告所有)

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